2x2...人と文鳥の小さな群れ

シルバ@blanccasseのための備忘録

花海棠の樹の下に


春に咲く、花海棠
諸々の処理のため、子犬ちゃんと実家へ。

実家で海松の姿を見た瞬間、何とは無しに息を呑んだ。そっと触れてみる。撫でてみる。昨日より格段に冷たい身体。もう、ここに海松の魂はいない。それを確認したかったのかもしれないが、それと死の実感を得るということとは別問題なのだということが分かっただけであった。

・・まずは菓子折持参で医師の元へ。長い間お世話になったことへのご挨拶と、ついでに風の血液検査、及び予防接種を。

海松のことは、医師にとっても予想外のことであったらしい。けれど、死に様を聞いても「よくがんばりましたよ。大往生ですよ。」と言ってくださる。母親を労るその言葉が、とても嬉しかった。

風は海松と違って臆病な子なので、久々の病院に首も肩も両肢も竦め、最大限に目を丸くしたまま硬直し、何をされようが声も出ず。。。その様子を母親は「健康なのに!」と可哀想がるが、風にも長生きして貰わなければならないのだ。

我が侭でお転婆で喧嘩上等の狩人で、お姫さま気質の海松とは対照的に、風は家族と過ごした時間が少ないせいか、あまり甘えるのが上手でなく、猫付き合いも下手。遠くへまで行くこともなく、喧嘩もしなければ狩りもしない。よって怪我もほとんどないので、海松よりは感染症の危険も少ないだろうが、出来る手を打つことは必須。それに、もう十歳を越えていることもあり、私は血液検査結果という保証も欲しかったのだ。

結果、若干血糖値とコレステロールが高めであっただけで、腎臓も大丈夫。体重3.1kg。気になるほどの問題点は無し。風は帰宅するや否や、素っ飛んで逃げ去ったが。もうあと十年。風には母親と一緒にいてやって欲しい。あの家で、ずっと海松が支えになってくれていたように。。。

その後、埋葬準備。

本当は、段ボールの棺に入れたまま、埋葬したかったのだが、古く狭い庭では垣根も庭木も根が蔓延っており、海松の身体が入る大きさの穴を掘るのがやっと。母親の身体に合わせて仕立てられた庭では、まるで小人の国に彷徨い込んだ巨人。子犬ちゃんと二人してバキボキあちこちの枝や花芽を折りながら、ようやく埋葬。

かつて外猫たちを埋めた庭の隅ではなく、中央の奥側。そこには、春になれば菫が咲く。花海棠が咲き散る。紫陽花も色を添える。魂が旅立ってしまっても、海松の身体は大好きだった庭へ還ることが出来る。

出掛けに寄ってくれた父親と共に、四人で花と線香を手向け、合掌。もうこれで、二度と海松が苦しむことは無くなったのだ。そのことに。そして、長い間傍にいてくれたことに、感謝を。