2x2...人と文鳥の小さな群れ

シルバ@blanccasseのための備忘録

爪切りのロールスロイス@世界に誇る町工場の職人魂


高級爪切り

刃のアップ
偶然つけたTVで、日曜ビッグバラエティ「メイド・イン・ニッポン!世界に誇る町工場の職人魂」という番組の再放送をやっていた。それが丁度、以前我が家で文鳥たちのためにと購入した爪切り*1の場面で(唖然)。

番組HPから引用してみると、煽り文句はこんな感じ。

<爪切りのロールスロイス
文化都市イタリア・ミラノにある高級爪切り店。そこで日本から唯一、販売を許可されている新潟県三条市の工場の様子に迫る。昔から刀鍛冶が数多く存在した町で、もともと釘抜きを作っていたという小さな工場が、その技術を生かして爪切りの生産を始め、今では爪切りのロールスロイスと世界で評価を集めているのだ。その評価のヒミツを探るべくリポーターが田んぼに囲まれた工場に向かうと、なんとそこは近代的なオフィスビルだった!さらに長髪のイケメン社長が登場。世界で高い評価を得る爪切りの刃は、イケメン社長の親類達が作っていた!

日曜ビッグバラエティ「メイド・イン・ニッポン!世界に誇る町工場の職人魂」 】HPより

も・・ものすごいことになっちゃってますが?(滝汗)

確かにSUWADAの爪切りは切れ味抜群で、本当に刃当たりが柔らかく、文鳥たちだけでなく、二枚爪になりやすい人間共も、今ではこれ以外で爪切りするなんざ考えられない。しかも、機能のみならずデザインも優れており、以前の購入品も(当時の)通産省選定1998年度グッドデザイン賞受賞作。今年も2007年度 中小企業庁長官特別賞を受賞しているようだが。。。それにしても“爪切りのロールスロイス”って(汗)。

個人的には、イケメン社長もロールスロイスもどうでも良い。ってーか、要らない。そんな煽り(爆)。

けれど、初めて見た職人さんたちの作業風景には心を打たれた。この切れ味を保つために必要な刃合わせは、1mmの1,000分の5というサイズなんだそうだ。しかも合刃合わせは更にすごい。いずれも1〜2ミクロンの世界。

SUWADAのサイトを久々に拝見すると、どうも私が購入した時より大分高級になったようで、購入するにも半年待ち。商品も変わり、値段も上がっている。でも、一つ一つに職人さんの技と魂の籠もった、本当に良い品ということだけは花丸保証出来る。研ぎに出せば一生使えるものなので、清水の舞台から飛び降りてみるのもお薦め(笑)。

以下、職人さんのインタビューなのだが、googleの神様がキャッシュしかくれないため、備忘録として丸っと保存。特に興味のある方へ。

a technical expert vol.164

技を支える
世界に喜びの切れ味を提供する
「合刃」の加工技能
高級爪切りの製造職人
小林 英夫さん(75歳)

使う人が喜びと幸せを感じてくれるような気持ちのいい切れ味と使い心地、見た目も高級品に恥じない外観と風合いが……そんな世界レベルの爪切りをつくっているという自信と誇りはありますよ。

幻の爪切り……入手しにくいことから一部ではこう呼ばれる世界レベルの高級爪切りで知られる新潟県三条市の?諏訪田製作所。前工場長で技術アドバイザーを務める小林英夫(こばやし・ひでお)さんは七〇歳代半ばを超えた現在も、製造ラインの中枢で練達の技能を発揮して、後輩の指導育成に当たっている。
「小学校時代から見よう見まねで親父(創業者・小林祝三郎翁)の鍛冶屋仕事を手伝っていましたが、大きくなるにつれて真空管ラジオを自分で組み立てるようになってね。当時の最先端、五球スーパー・ラジオなんかを頼まれて作って小遣い稼ぎをしていたから、最初、この子はこっちの方面を本業にするのかな、などと思われていました。後に二代目社長となった兄(騏一さん)もいましたから」
それが、現在では同社製品の高級ブランド化を推進し、職人の誇りを象徴する存在となった。

平成八年に通産省グッドデザイン選定を受けたSUWADAブランドの高級爪切りは、いわゆる板バネ刃を貼り合せたテコの原理の爪切りとは違い、ニッパー型である。単純には電線を切ったり被覆膜を切除したりする工具のニッパーを考えていただければいいが、先端は斜め刃で爪の形に沿って円弧状に加工されている。
この薄刃の先端部分がピッチリと隙間なく合っていないと、秀逸な切れ味は実現しない。

「合刃(あいば)合わせといいましてね、限りなくゼロに近く、ゼロではない。一〜二ミクロンの隙間で両刃が接しています」
月産九〇〇〇丁の生産に追われている現場は分業体制で稼働しているが、この合刃工程を完璧にやってのける第一人者が小林さんなのだ。

「スジのいい若手もいて楽しみですが、現在はそれぞれの持ち場を完璧にやってもらい、お客様に満足していただく製品を少しでも早く届けることが最優先です」
今春から夏にかけて全国放映のテレビで三代目の現社長・小林知行さんの高級品を積極的にアピールする経営理念が紹介されるなどしたことで、同社の爪切りは注文が殺到し、納品は半年以上先になるという。すべてが職人による手作りだからだ。

「月に二、三回はお客様からもどってきた商品のメンテナンスもやります。一回に二〇丁前後かな。このようなお客様との直接のつながりは大事です。貴重な要望やご意見が聞けますからね」
その際の切れ味チェックには自らの爪を用いるという。

「爪を挟み切るわけですが、握りこんで行く時にス〜ッと入っていく、その感触が肝心なんです」
最近はネイルサロンや介護現場での需要も増えてきたという。とくに巻き爪などへの対処法として医療関係者の評価も高い。

「何と言っても優れた切れ味、これが第一です。それを支えるのが合刃やカシメの技能です。その切れ味が評価されて海外でも広く使われるようになっています。ただね、一〇年前だったか、高級品にはそれなりの優れた外観や風合いも欠かせないなあと……」
たまたま上京したとき、高級文房具やDIY用工具の専門店である東急ハンズの店頭を見て気づかされたという。

「高級ネイルニッパーとしてうちの商品とドイツ・ゾーリンゲンの品物が並べられて陳列されていました。切れ味には自信はありましたが、正直に言ってどうもデザインや外観の風合い、質感でイマイチかなあと思いましてね。それ以降、外観でも高級品にふさわしいものをと追究して、この秋からの新製品ではシリンダーバネを使い、表面の磨きもミラー仕上げなどは三条の最高の磨きです」
各工程、ならびに製品の実際の形態は写真にある通りだが、各工程の職人さんと訪れる小林さんとの笑顔の交流は印象的である。どうも謹厳実直のお堅い名人気質というタイプではないらしい。

「ええ、私、ちょっと歌の稽古があるから工場を留守にするからねってな調子で仕事は自由にやらせてもらっていますからね(笑い)」
歌といっても本格的だ。地元合唱団の立ち上げに尽力したり、オペラに出演したり、個人リサイタルも年中行事になっている。
「リサイタルのリクエストでは『千の風になって』、これは増えましたねえ。私のテノール秋川雅史さんよりは少し高めですがね」
口跡明瞭な話し振りの背景がうかがわれる話である。
(撮影・福田栄夫 取材・吉田孝一)

キャプション
p.2左上から
小林さんの独壇場とでもいうべき合刃(あいば)合わせの工程。電灯の明かり越しに刃の隙間を確認する。

SUWADAの高級爪切りにはさすがの存在感がある。下にあるのは昭和20年代の旧製品で「太鼓バネ」のついた直刃タイプ。

原材料は炭素を多く含むステンレス刃物鋼。この鋼棒が下段左下の鍛造工程で刃と握りの一体化した部品になる。

「カッタン、スー」……鍛造工程のプレスハンマーの音を聴けば瞬時に微調整の加減が分かるという。

粗仕上げの各段階で多彩な仕様のベルト式グラインダーが威力を発揮する。製作工程は分業が基本。

一対の刃がカシメられた後、切れ味や可動性など職人技の調整に移る。

p.3左上から
全工程の手技に通じた小林さんは、「実力派の中堅や熟練職人が育っているので、今後は若手の育成に力を注ぎたい」という。

合刃(あいば)調整後の刃に爪の形に沿った弧状の削りを入れる。両刃の接点は隙間なく一体化して見える。

プレスで2枚の刃をピンでカシメる。キッチリとカシメた後、ハンマーで叩いて滑らかな可動性を出す。

斜め刃は直刃と違って左右の刃はまったく同形ではない。手の平と同じ対掌体なので部品的には2つになる。

p.4上から
レトロ感から高級感へ。ショールームには喰い切りから爪切りの製造に転換した後の歴代の製品を展示。

切れ味を左右する合刃合わせは、一瞬のヤスリがけで40〜50ミクロンの刃の隙間を1〜2ミクロンにする。

シリンダーバネを仕込み、納品前の製品の調整をする。職人の手作りによる逸品がここで厳しく検品される。

ショールームを併設した本社ビルの後背地に工場がある。社名は移転前の三条市内の地名・諏訪田に由来。

*1:その時のエントリがごめんよごめんよごめんよぉ(涙)